図書館の蔵書から知る、かつての武雄市図書館・歴史資料館の姿

さて、イロイロ調べていた中で、建築設計資料97 図書館3という本を、たまたま見つけたのだけど、これには魔改造される前の武雄市図書館・歴史資料館の図面が掲載されています。
発行が 2004 年なので、武雄市図書館の開館から 3 年弱ちょっと経過したあたり。

本自体は、建築設計を生業としている人たち向けの参考資料となるようなもののようで、実作資料として各地の図書館の建物自体の細かい情報(建築面積とか、施行会社とか、主だった材質だとか)とともに、設計者による建物の概要説明や平面図、建物内な写真などが掲載されています。図書館を設計する際に考慮すべき点を解説した記事の中では、書架の耐震設計に関するパートなど、素人が読んでも勉強になることが結構書かれていました。

武雄市図書館以外にも、伊万里市民図書館田原市中央図書館豊田市中央図書館などが実作資料として掲載されています。(この本、掲載されている写真全てがモノクロなのが、とても残念。)

とりあえず、現時点で図書館から借りているので、手元にあるので、見ながらこのエントリーを書いていますが、武雄市図書館の館内写真から伝わってくるのは、「明るくて使いやすそうな図書館だったんだ」ということ。

改装後の館内写真は、ネット上に出回っているので目にすることが多いですけど、それらの写真よりも、改装前の写真のほうが魅力的に見えるのですよ、自分にとっては。
掲載されている写真や平面図を見れば、蔦屋としての販売コーナーとスタバになってしまったエリアの上部にあるトップライトがなんで円形だったのかとが判りますし、 1 階奥に押し込められてしまった子供向けのスペースの配置が改装前にはどうなっていたかや、ペンダント照明に地場産業の竹細工を使っていたといったことが解説中で触れられていたりと、イロイロ失ったものは大きいと感じさせられました。

設計者の想いは?

武雄市図書館・歴史資料館は、2001 年に佐賀県快適建築賞の特別賞を獲っているんですね。
これは、設計者である佐藤総合計画の受賞歴の中にも記載があるのですが…。
#受賞歴には、東京ビッグサイトとか岡崎市図書館交流プラザりぶらとかの名前も見えたり…。


ところが、佐藤総合計画の Web サイトには、この受賞歴のところに名前があるだけで、武雄市図書館・歴史資料館の情報はありません。
正確に言うならば、少なくとも今年の 6 月末頃には作品集の中に紹介ページがあったのに、何故か武雄市図書館が削除されているのです。 → 魚拓はこちら

消えたことに気がついたのは 8 月の終わりごろですが、たった 2 ヶ月で何故こんなことになったのかは、外部からは知る由もなく…。

改装時の設計でも、佐藤総合計画が関わっていたということですし、改造後の現地の様子も知っているようなこともわかっているんですよね…。

九州公共建築フォーラム2013開催に伴う見学会をフォーラム翌日11月15日(金)に開催、佐賀県武雄市図書館と伊万里市民図書館を見学しました。講師は武雄市図書館の設計者である佐藤総合計画の飛永直樹氏。

[From (公社)福岡県建築士会情報誌 メッセメールマガジン 平成25年12月1日発行 第90号 通巻第306号]

「どうして、こうなった?」としか、言葉が出てこないわけですが、設計した人達の心中は、やはり穏やかではないのかもしれません…。

そして感じた図書館の有り難さ

建築設計資料97 は「図書館で借りた」と、前半で書いているのですが、自分の住んでいる文京区内の図書館では所蔵されていなかったので、今回は台東区のほうで所蔵しているものを相互貸借資料の形で借りています。
東京都内の図書館でどこかに所蔵されているかを、東京都立図書館のサイトに用意されている東京都立図書館統合検索(何故、ドメイン名は富士通?)を使ってチェックしてから、改めて文京区の図書館にリクエストした次第。

#まだ新品で手に入れることの出来る(電子書籍としても紀伊國屋書店から入手可)ようなので、買うという選択肢もあったんですけど…。

たまたま、まだ購入ということが出来る資料だったわけですけど、絶版になっているものを探そうとした時には、やはり図書館を頼りにせざるを得なかったんだろうなぁと考えると、図書館の持つアーカイブ機能の重要性を改めて感じました。

ちなみに、カーリルだと全国の図書館を対象に横断検索が出来るので、佐賀県内で蔵書しているところを調べてみたところ、武雄市図書館にもあるようです。興味のある方は武雄市図書館で、この「建築設計97 図書館3」が閲覧や貸出が受けられるか、確認してみてはいかがでしょうか?
#「改装前の武雄市図書館・歴史資料館の状況の判る資料があるか?」とリファレンスカウンターで聞いてみるとか…。

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