多賀城市立図書館 「来館者目標120万人」を達成しても、数字の信憑性は…?

多賀城市立図書館が新しい建物での再スタートまで、あと40日ほどとなったわけですが、再オープン後の来館者目標として初年度 120 万人という数字が設定されています。
ここで注意する必要があるのは、この数字は純粋な図書館利用のための来館者だけでなく、書店やカフェといった「商業スペース」のみの利用者であっても来館者としてカウントすることになっているということを、行政がハッキリと認めています。

今野委員
 図書館単体での利用者数は、把握はできないということですか。

生涯学習課長
 図書館と商業施設の仕切りの部分には、出入り口が数箇所ありますし、2階の部分も同様です。すべての場所に設置するのは、経費もかかりますし、出入りも激しくなるだろうと思われます。一人の方が何回もカウントされるというのも数字として信憑性の低いものになりますので、この建物は商業施設と図書館のそれぞれの強みを活かし相乗効果を持った施設運営をするということにしておりますので、A棟全体で人数を把握することにしていきたいと思っております。
 ただ、先ほども申し上げましたように、図書館がどれくらい利用されているのかということにつきましては、現在、市民利用率が低いという課題がありますので、その部分が向上するような形で、数字を抑えられればと思っております。

今野委員
 図書館単体での来館者数、例えば何万人達成というものは、把握はできないということですか。

生涯学習課長
 はい、そのようになります。

[From 平成27年 多賀城市教育委員会第11回定例会会議録]

生涯学習課長の答弁を見ていると、「一人の方が何回もカウントされるというのも数字として信憑性の低いもの」ということがわかっているにもかかわらず、「A棟全体で人数を把握する」と、なんか矛盾したこと言ってるようなんですけど、いいんですかね、ホントにそれで…。

フロアレイアウトと人の動線の関係

多賀城市立図書館の「商業部分」に入居するのは

  • 蔦屋書店(書店、CD/DVD レンタル)
  • スターバックスコーヒー
  • ファミリーマート
  • カフェレストラン PUBLIC HOUSE

であることは、すでに何度か報じられている通り。それそれが単体でも、それなりに集客出来そうな顔ぶれですよねぇ。
#ただ、 CD/DVD レンタルが併設、と報じられているのは見た記憶はないんだけど…。

多賀城市教育委員会の定例会用資料として公開されたものの中に、BDSの設置位置が記されたフロアレイアウト図があったので、それを見ていて、ふと思ったのが

ということ。


館内併設となるファミリーマートは、図書館開館と同時に、多賀城駅構内の NEWDAYS に次いで、もっとも駅最寄りのコンビニとなるようなのですが、このファミマには、図書館北側と図書館館内の二ヶ所の出入り口が存在します。出入り口の配置としては、商業ビルなどに併設されたコンビニではよく見かける配置ではないでしょうか。

駅構内の NEWDAYS には、コピーサービスと ATM 未設置のようですので、ファミマ側に NEWDAYS で不足しているサービスがあったら、利用者はそっちに流れるんじゃないか、というのは十分に考えられることではあります。

それと、多賀城駅周辺のマップを見ていて気になったのは、駅の北側にある東北学院大学多賀城キャンパスの存在。
現在は、多賀城駅から東北学院大学までの経路上に存在するコンビニは、駅構内の NEWDAYS のみのようですから、図書館併設のファミマがオープンすれば、大学生にとっては非常に重宝がられる存在になりそうです。図書館の開館時間内であれば「図書館内をショートカットしてファミマで買い物」してからキャンパスに向かう学生がいたり、帰りも「ファミマで買い物済ませたりしてから、図書館内をショートカットして駅に向かう」という学生も出てくるでしょうね、おそらく。
#天気の悪い日は、特にその傾向が強まりそうな気がします。

最短ルートを使おうとすることについては、楽な方を使いたいという心情も理解できるんで、兎や角言うつもりはないのですが、建物の設計に関わっている CCC が、そういうことを考慮していない訳はなかろうとは思うわけです。

BDSの設置位置 - 平成27年第11回 教育委員会定例会議案 p.56 抜粋

BDSの設置位置は、というと抜粋したレイアウト図中の、青丸の部分。
駅側の入口側に 2 台(商業スペース側と唯一の図書館への直接経路側)とファミマの図書館側出入り口とその横の出入り口の計 4 台。この配置からも分かる通り、駅側から入ってファミマ抜けてく(またはその逆)といった「ただ通り抜けるだけ」でも、ガッチリと来館者としてカウントされるようになっているのは、一目瞭然かと。

しかし、改めて図面見て思うのは、駅側から入った時の正面は商業スペースの中でも最も良い場所にに蔦屋書店が鎮座してますよねぇ…。

コンビニのみならず、CD/DVD レンタル「だけ」に用事のある人も居るでしょうし、カフェレストランにランチしに「だけ」来る人もいるでしょう。「ここのスタバ、おっしゃれ〜」で満足しちゃう人いるんでしょう。
「商業エリア」だけで満足してしまうような人達にとっては、図書館エリアがオマケのように感じるでしょうし、わざわざ立ち入るようなこともしないかもしれません。もちろん、そういった人達が居ることも仕方がないというのも判るわけですが、そんなことお構いなしに、全ての来館者を「図書館利用者」として偽ってカウントしようとする行政と指定管理者の姿勢には、大いに疑問を感じるわけですがね…。

新しい多賀城市図書館のフロアレイアウトから行けば、図書館エリアに入る部分全てに BDS を設置すれば、実質的な「図書館利用者」と「それ以外」の来館比率の計測は非常に容易に出来ると思うのですが、それをやってしまうと、都合の悪い人たちが沢山居るのは、お察しください、ということなのでしょうか?先行する武雄市図書館や海老名市中央図書館とは違って、図書館とそれ以外の区切りが視覚的にもハッキリ判るようになってるのにね。
#BDS の設置費用の話云々じゃないんでしょうね、分けてカウントしない理由って…。

「壁の向こう側」の図書館は活用されされようがされまいがどうでもよくて、「壁のこちら側」の商業スペースが賑わってくれる方が、「復興のシンボル」的に扱う上で都合が良いのかもしれませんね、行政としては…。

TSTAYA のレンタル、復活なわけですが…

さて、元々あった TSUTAYA 多賀城店が東日本大震災による津波被害で閉店して以来、 5 年ぶりの再出店となる TSUTAYA レンタル。
地元の方の中には、図書館よりもソッチのほうが嬉しいという方もいらっしゃったりするんじゃないかともは思いますので、それなりに来館者を稼いでくれることでしょう。ただ、少なくとも以前あった店舗よりは営業時間は短く、「公共図書館」内への併設であることからも「ある特定ジャンル」の扱いは、確実にないであろうと思うわけですが、そのような状況でどの程度レンタルのニーズに応えることができるでしょうね?
#レンタルとしては、それなりに主力商品なんじゃないすか?>「ある特定ジャンル」

同じ市内に TSUTAYA が存在する武雄市では、図書館内のレンタルコーナーは閑古鳥が鳴いているらしですけど、多賀城市の場合は他に店舗がありませんから、その点ではまだマシなのかもしれませんが。
武雄市のように「DVD旧作130円」のような真っ赤な幟が、図書館の外に出されたりするのかも、要チェックですね。

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