OLPCプロジェクトの成果物である Sugar を触ってます

「100 ドル PC を子供たちの教育のために」として一世を風靡した OLPC プロジェクトの軌跡が纏められている ラーニング・レボリューションという本を読んでいるのだけど、その中で OLPC の核をなすソフトウェア部分が ”Sugar” と呼ばれる OS と各種教育用ソフトウェアが一体となった環境として、公開されていることをを知ったので、ちょこちょこと試してみています。

Sugar 自体、Fedora ベースで開発が進められていることもあり、移植版が Debian stretch や Ubuntsu などの各種 Linux ディストリビューションでも利用可能になっていたり、VirtualBox 用の仮想アプライアンスが用意されていたり、USB メモリにインストール、それから boot して使う Sugar on a Stick も用意されていたりと、試そうと思えば比較的簡単に試せるようになっています。
#日本で、 XO を手に入れるのは、簡単ではないでしょうからね。


Sugarのトップ画面

プルダウンメニューを表示
私についての設定画面

学習に使えるソフトウェア( Sugar ではアクティビティと呼ぶ)は、ワードプロセッサや計算機、ペイント、画像ビュアーといった Windows や OS X で基本的に用意されているものは一通りありますし、物理シミュレータ、お小遣い帳といったもの、当然 Web ブラウザやチャットといったものもあるのでネットを利用することも簡単にできるようになっています。

言語環境を切り替えれば日本語での表示に切り替わるのですが、個々のアクティビティを細かく見ていくと、日本語化出来ていないメッセージが出てくる部分が目立つので、ローカライズのリソースが無いからなんだろうなぁと。
日本ではあまり OLPC が使われていないから?というのもありそうな気がします。本の中でも XO を配布する初期段階で、まずローカライズから始まると言った下りも書かれていましたしね。

「面白いなぁ」と思ったのは個人毎の設定を行う中にある「私について」というメニュー。
利用者である「私はどういう人」というのを設定するものなのですが、性別の選択肢に「中間」があるというか、男女どちらか一方を選択しなくてもいいという、選択肢が用意されていること。
この辺は、子供を守るを「悪意を持った大人」から守るという観点からも、うまくできているなぁ、と思いました。

それから、"TurtleBlocks" という Scratch ライクなものがあるので、プログラミング学習も出来ますね…。
アクティビティ自体も、利用者が足りない機能を追加していったり、新しいアクティビティを作ることが可能になっているそうですので、Sugar自身が実践的なプログラミングも出来る環境とも言えそうです。

ScratchライクなTurtleBlocks

あと、試せてはいないのですけど、自分が使っているアクティビティに友達を招待して、その友達と共同作業をやるということも出来るようです。この辺は、グループ学習を意識した機能なんだろうな、という気がします。

今のところの感想ですが

使い込んでないのでなんともいえませんけど、複数の機能感で操作感が統一されている、極力文字の排除されたメニューで操作できる、という意味では、子供向けには良さそうに思われます。
学習ツールとして必要と思われる機能は一通りそろっていますし、数年前に流行った NetBooK にセットアップして子供に渡す、というのはありかもしれませんね。ゼロではないにしても、ウィルスとかマルウェアへの対応を Windows ほど頭を悩ませる必要がない分、管理する側としては安心して使わせることが出来るというのもありますし…。(アンチウィルスソフトを個別にインストールすることは出来るので。)

そして、話は脱線する

ラーニング・レボリューションを読み始めたきっかけ、ってのが、「ネットでdisられておりまして」と自身のブログに綴った中村伊知哉氏のブロクを読んでだったりします。

 ウォルター・ベンダー他「ラーニング・レボリューション」。副題「MIT発世界を変える100ドルPCプロジェクト」。
 大プロジェクト遂行の汗と涙が詰まった好著。パソコン本でも教育本でもなく、社会起業本であります。

[From MIT発世界を変える100ドルPCプロジェクト ~ Ichiya Nakamura / 中村伊知哉]

#Amazonの書影データ、パクってブログに貼り付けるぐらいなら、アフィリエイトリンク置いたほうがマシだと思う、というか大学教授の肩書を持つお方が他者の著作権を軽々しく侵害している事のほうが驚きなわけですが…。

社会起業本と中村氏は評していますが、XO の導入によってどういった効果があったのかといったことや、導入までの問題点といったことも書かれていますし、各国の事例といったものもあるので、そういった部分は日本の学校教育の現場においても参考に出来るんじゃないかと、いうのが自分の感想ではあります。

中村氏に於かれましては、武雄市ICT教育推進協議会の席上で、

中村:1人1台年間1万円(保守料全て込み)で導入できたら、他の自治体でも導入したいという話は聞いている。これができれば一気に拡がる。

[From 急浮上した恵安製PC 武雄市タブレット端末教育事業 疑惑の機種選定(6)|政治ニュース|HUNTER(ハンター)|ニュースサイト]

と発言されたということが議事録に残っていたそうですが、ブログでも

 デジタル教科書教材協議会を立ち上げたのは2010年。日本も学校の情報化を放っておけず。100ドルPCがウルグアイの全ての子どもに行き渡ったという2009年のニュースに触発されたことが大きかった。負けずに、がんばります。

[From MIT発世界を変える100ドルPCプロジェクト ~ Ichiya Nakamura / 中村伊知哉]

と書かれておられますので、OLPC プロジェクトのことを意識したうえで、「1 万円で(タブレット)導入できたら」ということをおっしゃったんでしょうかねぇ…。

但し、OLPC の方は、きちんと使える教育用ソフトウェアも含めて 1 台 100 ドルを目標の一つとして掲げ、それに向かって活動しているわけですが、武雄市での事例についてはハードウェアとしてのタブレットを 1 万円に近づけただけという感じにしか思えませんし、耳障りの良いお題目の部分だけを持ってきただけで、「子供たちの未来のための教育を」といった崇高な考えではないように感じられるのが、とても残念に思えるわけです。(デジタル教科書も、何か進展ありましたっけ?って感じですしね。)

OLPC 自体も、Android ベースのタブレットを出しているようですから、その辺を頑張って引っ張ってくればいいのにねぇ、と思ったりなんかするわけですが、そういうことをしようというのもないようですしねぇ…。

発展途上国の子どもたち向けに「100ドルパソコン」をつくろうとしてきた非営利団体「One Laptop Per Child」(OLPC)が、ウォルマートでAndroid搭載タブレット「XO」を150ドルで販売開始する。

[From OLPCから150ドルのAndroidタブレット « WIRED.jp]

#Sugar が動くタブレットがあったら、DeNA も Scratch モドキを作らなくても良かったんじゃねぇの、とかとか…。

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