武雄市の公教育改革は、ボランティアが「頼みの綱」?

武雄市が花まる学習会との間で 10 年間の提携を締結(しかも、随意契約で!)したことにより開始された、市内各小学校での花まるタイム。
新聞でも取り上げられて、その実態がわかりつつあります。

 佐賀県武雄市が今年度、学習塾「花まる学習会」(さいたま市)と連携して市立小2校で始めた官民一体型教育では、地域住民が大きな役割を担う。

[From (3)地域住民 教室で学習支援 : 教育 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)]

「花まるタイム」の進行自体は、教師の役割のようですが、その進行の補助として主に各学校の通学区域内のお年寄りをボランティアとして活用していうようですね。

 住民でつくる学校支援地域本部に約50人が登録。週4回、始業前の15分間に塾教材を使って学習する「花まるタイム」で各学年の教室に分かれて、児童たちを見守る。四字熟語を大きな声で音読した児童に拍手を送り、計算問題を解けた子のプリントには赤鉛筆で花丸を描く。終了後は、子どもたちの様子などを報告し合う。

[From (3)地域住民 教室で学習支援 : 教育 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)]

さて気になったのは、下に引用する tweet。

確かに児童数の多い学校だと、 100 人近くホランティアをかき集める必要があるけど、じゃ実際に花まるタイムが実施される学校で動員される地域ボランティアは、全体で何人ぐらいになるのかを試算しようとして、各学校の学年、クラス別での児童数を調べようとうだうだしていたら、最近公開された SMILE 学習の検証報告書に記載されていたので、それをベースに計算してみることに。

佐賀県武雄市で実施されているICT教育の第1次検証報告会が6月9日、東洋大学(東京・文京区)で開かれた。2014年度に行われた、タブレットを使ったスマイル学習(武雄式反転授業)、プログラミング教育などの効果を東洋大学現代社会総合研究所が検証し、代表の松原聡氏らが報告した。報告書(PDF)は武雄市教育委員会がウェブサイトで公開している。

[From 佐賀県武雄市「ICT教育」のタブレット活用-- 「成績向上の可能性アリ」も正相関ナシ - CNET Japan]

#武雄市のタブレット教育に関しても書きたいことは色々あるけど、それはまた別の機会に。


それが、以下の表。学校別クラス別児童数は、武雄市「ICTを活用した教育(2014年度)」第一次検証報告書の 7 ページ目にある図表 4 、図表 5 から。
あくまでも、試算であって、実態とは違う可能性があることは強調しておきます。

花まるタイムでの想定ボランティア動員数

Google ドライブのスプレッドシートにしてありますので、そちらを見ていただいても結構です。 → ボランティア数予想_01
表にも書いてありますが、山内東、山内西は未実施(「塾の手法が公教育に馴染むか疑問」、「サポートのためのボランティアの確保が困難」とのこと)なので、試算からは除外。特別支援学級での実施状況が不明なので、そこもボランティア数は、未算出としています。

児童 5 人につきボランティア 1 人で試算してみると、1 回の花まるタイムのために、すべての小学校で必要となるボランティアの人数は 499 人。
これだけの人員を、週 3 〜 4 回実施される花まるタイムのために確保しなくてはいけないわけですよ。

花まるタイムの実施を週 3 回だと仮定したすると、週での実施率は 60%。
小学校の年間登校日数を調べてみたところ、おおよそ 200 日前後のようなので、登校日数を 200 日と仮定、そこに週での実施率を掛けると、年間 120 日 花まるタイムが実施される、となります。毎回 500 名が駆りだされるとなると、延べで年間約 6 万人ものボランティアが必要となる計算に…。(武雄市の人口より多くなるし…。)

全クラス同時実施でないかもしれないといったあたりの事情は全く考慮していませんし、単純な頭割り計算なので、実態とは異なる可能性があるとはいえ、これだけの大人数のボランティアに頼らないと回すことの出来ない「花まるタイム」は、運営上かなりのリスクを抱えているようにしか思えないのですが…。
また、

  • 短時間に集中的に集まってくるボランティアに紛れ込んで、不審者が校内に侵入してこないような対策は?
  • インフルエンザが流行した際の対応をどうするのか(学校閉鎖だけならいいですけど、学校を起点とした地域全体での大流行になる危険性は?)
  • 10 年間という長期にわたって週 3 〜 4 回のボランティアの確保が出来るのか

といったあたりは、ちょっと考えると出てきそうなことですし、これ以外にもシステムが崩壊しかねない問題点がまだまだ潜んでいるのではないかと、外野から見ていると感じるわけです。
#おそらく、継続的にボランティアを確保しつつけることが、一番難しいかと…。

まぁ、「地域のお年寄りが、地域の子供達のためにボランティアとして頑張る」というのは美しいお話なのかもしれませんが、行政側(というか花まる学習会?)はボランティアを都合の良い「無償労働者」として捉えていたりするのではないか、とも思うのですよ。
先に試算したとおり年間約 6 万人がボランティアとして参加、それぞれ 1 回あたり 0.5 時間の労務を無料提供していると考えると、年間 3 万時間分の人件費が浮く計算となるわけで、そこにきちんと対価を支払うとなれば数千万円の費用が必要になりますからね。

年間 6 万人のボランティアの労働時間 3 万時間搾取するような体制で進められる「花まるタイム」は、本当に子供たちのためになることなのか、良く良く考えないといけないんではないでしょうか?
#他の自治体へは、このボランティア確保がハードルとなって頓挫するんじゃないかと、個人的には思いますが…。

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