情報公開請求制度に則って取得した文書が、佐賀県から到着しました。
ただ、公文書名が「学習者用端末導入に係るパンフレット作成・配送業務委託に係る見積書の提出について」と、ちょっと意図していた内容と微妙に違う感じのものが開示されるような文書名なので、現物見てみないことには、なんともコメントのしようがないなぁ、と。
[From 保護者向けの配布資料を確認してみたかったので(タブレット PCの件) #佐賀県 - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]
開示された文書は、下記のリンクから参照出来るようにしてありますので、興味のある方はご覧ください。
[PDF]教委情第186号 学習者用端末導入に係るパンフレット作成・配布業務委託に係る見積書の提出について(伺)
開示された文書自身は、4つのパートの分かれているので、それぞれに自分なりのコメントをつけていきたいと思います。
起案文書(1 ~ 6 ページ)
まずは、起案文書。
作成部数だったり、発注予算だったり、納期だったり、発注仕様書だったりなので、まぁこんなもんでしょうねぇ。発注金額が妥当なのかどうか、発注先の選定はどうだったのか、という点に興味があったわけではないんで、この部分については以上。
パンフレット その 1 (7 〜 14 ページ)
ICT 教育全般に関して、「佐賀県では、どう進めていきます」という内容を記載した全 8 ページのパンフレット。これが配布されたのは先の起案文書の委託期間から考えると、平成 25 年の一学期の終わり頃と推測出来ますが、この時点では学習者用 PC に関する詳細は、まだ載っていませんね。
ただ、パンフレットの最終ページにある FAQ の中で、
Q 卒業したら、学習者用端末はどうなるのですか。
A 当然、自分の所有物ですので、高校卒業後も普通のパソコンと同じように使えます。例えば 、九州大学では、今年度の入学生からパソコンを持つことが義務付けられるなど、パソコンを使った学習活動を日常的に実施する大学が増えています。また、就職する場合も、報告書の作成や企画書のプレゼンテーションなどパソコンの使用が日常的になっており、パソコンは現代社会では必須のアイテムとなっています。
太字にした部分の記載のように、この時点で「個人購入」である(「自分の所有物」≒「県の所有物ではない」)ことを匂わせる表現は入っていたんですね。
全 8 ページ出るパンフレットの中で、「個人購入」を匂わせるような表現はここ以外ありませんから、配布された時点(去年の夏休み前?)でこれを読んで「購入は個人負担」というように考えた保護者や生徒はいなかったんじゃないかと…。
あ、開示された起案文書に基づいて作成されたのは、このパンフレットですね。
残りのパンフレットの作成についての起案文書も別に存在するのだと思うのですが、今回は開示されませんでした。
パンフレット その 2(15 〜 18 ページ)
全 4 ページなので、A3 サイズに印刷して二つ折り、って体裁なのでしょう。「学習者用PC通信 第2号(平成25年10月)」という記述が1ページ目の右上に入っていますので、配布されたは 10 月から 11 月にかけてだったんじゃないかと推測。(で、第 1 号って、どれ?)
この資料の 2 ページ目の部分で、「学習用PCにかかる費用」という項目が出てきます。
学習用PCにかかる費用
- 販売は県が指定した業者が行います。
- 業者の指定は、価格やサポート面等を総合的に判断して行います。
- 価格が5万円を超える場合でも、保護者の負担は5万円です。(超えた額は県で補助します。)
- Wi-Fiモデルです。学校での使用には通信料がかかりません。
(家庭でインターネットと利用するためには別途インターネット回線が必要です。)
ここではじめて、生徒・保護者負担での購入という話が明確に出てきたという感じですね。
教育用管理ソフトという項目で、どんなものをインストールするとは書いてありますが、具体的な商品名はなし。
- 教育用管理ソフト
ウィルス対策ソフト、フィルタリングソフト、モニタリングソフト等によりセキュリティ対策を実施。不適切なインターネットサイトへのアクセスを制限できるため、安心して利用できます。
パンフレット その 3(19 〜 22 ページ)
体裁的にはパンフレットその 2 と同じで、「学習者用PC通信 第3号(平成26年1月)」と入っています。
このパンフレットで「高校入学には必須」ということが伝えられた、ということのようですね。
県立高校では、平成26 年度から、学習者用パソコンを利活用した教育を行います。
このため、県立高校入学者選抜の合格者の皆さんは、高校入学に当たり、県教育委員会が指定する学習者用パソコンが必要になります。
学習者用パソコンの概要は、以下のとおりです。
この学習者用パソコンは、県立高校での教育活動を行う上で必要な教材です。所持しなければ教育活動に支障をきたしますので、入学までの間に必要な手続等を行ってください。
このパンフレットでも、概略仕様は書いてありますが、インストールする(予定の)ソフトウェアの一覧は載っていませんでした。
○主な仕様:
- Windows 8 Pro
- 10.1型ワイドディスプレイ
- 取り外し可能なキーボード付き
- カメラ及び無線LAN 内蔵
- バッテリー駆動時間 約15.5時間
- ワード、工クセル、電子辞書ソフト(国語、英和、古語)を標準装備
- ウィルス対策ソフト及び不適切なウェブサイトへのアクセスを制限するフィルタリングソフトを実装
- 防水加工、3 年間保証など
なお、これまで入学時に購入されていた紙の辞書や教材のうち、学習者用パソコンに組み込まれている辞書や教材は購入する必要がなくなるものもありますので、標準的な例ですが、実質的な負担額は約3万円〜 3万5干円程度となります。
デジタル教材に関しては、学校や科によって変わってくるはずなので、全てを把握できるわけではないとしても、学習者用 PC として動作させるために共通的にインストールする必要のあるソフトウェアについては、生徒・保護者に知らされていてもいいと思うのですが…。(実際、どんなソフトウェアがインストールされるのかを知りたいと考えた保護者もいたでしょう。名前がわかれば「どんな機能を持つソフトウェアなのか」ということは、簡単に調べられますしね。)
ひと通り、目を通してみても…
開示された文書を読んでみたわけですが、結局一番知りたかった県指定の学習者用PCのとしてインストールされるソフトウェアの一覧(教育用管理ソフトがどういったものもなのかも含めて)の提示や機能の説明といったことは、生徒・保護者に対して行われていないということは、ほぼ間違いないようですね。
以前のエントリーに書いた
タブレット PC 自身の Administrator 権限は県教委が持つというのも説明されてないだろうし…。そんなわけで、生徒やその保護者が「これは勉強に使える」と思ったソフトを自由に入れることすら出来ないわけで、そういったことも事前説明されてしかるべき内容だと思うのですけど、さて実態はどうなっていることやら。
[From 個人所有タブレット PC を #佐賀県 が好き勝手に管理出来るものなの? - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]
といった、管理者権限に関する扱いも開示された文書中では説明がなされていませんから、この点についても生徒・保護者には知らされていないのだろうと、考えていいのでしょう。
この佐賀県の学習者用 PC としてのタブレットについては、生徒・保護者に購入してもらった機材を、県教委が使わせていただく、という形になっているのが実態なわけですから、県教委側が
- 管理者権限の扱い
- どのようなソフトウェアをインストールするのか
- インストールされるソフトウェアのうち、教育用管理ソフトに分類されるもので、どのようなログや情報が取得されるのか、またそれらの取得された情報の扱いはどのように行われるのか
といったことを説明する義務があると個人的には考えてますし、不正指令電磁的記録供用罪に抵触している可能性とかも指摘しているいるわけですが、そういった点をクリアして進めていってもらえるのであれば、ICT を活用した教育の試みそのものを反対するつもりはないんですけどね…。(教育の質や、進め方といったところに問題があれば別ですが。)
おまけ
一応、同等品の個人所有機器があれば、それを持ち込んでも良いという説明はあります(パンフレットその 3 に)が、実際にそういう対応をした保護者はいらっしゃらなかったのでしょうか。
○その他
県が指定する学習者用パソコンと同レベルと認められるものを個人で所有されている場合は、学校ヘ持ち込んで利用できます。ただし、学習者用パソコンとして利用するため
には各種設定が必要となり、設定に要する費用は実費でお支払いただきます。
実際に「ウチは、コレを持たせたい」ということで持ち込み機材の学習者用 PC 化に関するやり取りを県教委したという保護者さんがいたら、お話しを聞いてみたいですね〜。設定に要する実費は作業費だけだったのかとか、一部ソフトウェアのライセンスも含んでいたのかとか、所有者側で入れたいソフトが有った時の対応とか、管理者権限の扱いに関する説明はどうだったのかとか、気になるじゃないですか。
#ということで、タレコミお待ちしております。
Surface Pro 2 だったら同レベルと認められそうな感じはするので、来春高校進学のお子様を持つ方で「お仕着せの機器はヤダ」という方がいたら、本当に持ち込みができるかどうか、試してみてほしいなぁ、とかとか…。
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以前のエントリーに頂いたコメントに気になることが書いてあったので、その書類とやらを入手してみようと開示請求を佐賀県に対して掛けてみた。 佐賀県教委から「学... 続きを読む
バカじゃない? 返信
佐賀県教委から「学習者用パソコンの取り扱いについて」という確認書がきました。
その中に気になる表現が…
1学校で準備するデジタル教材について
各学校から提供しているデジタル教材は、教師が授業で使うための補助資料として、従来の紙の学習プリント等に代えて利活用することを目的に、県で購入し、生徒に貸与しているものです。そのため、このデジタル教材は、生徒本人以外が利用することはできません。教材データをコピーして他人に提供したり、インターネットなどに掲載したりすることは著作権法違反となりますので、ご注意ください。
県で購入し、生徒に貸与しているもの?
おかしいですよね?
5万出して購入したもののはずですが?
県は一部を負担したのではなかったの?
この内容の記載があるプリントと一緒に、
確認しましたということと、署名する欄のみが印刷された確認書を子供が持って帰ってきました。しかも、提出期限は明日。
なんかもう、⁇です。
ちなみに、子供の周りには自宅からタブを持ち込んだ子はいないようです。
コメント&情報提供有難うございます。
確認書の方は、今日配布されて明日回収という感じなのでしょうか。だとしたら、内容見て考える時間はほとんどありませんね。
文書自体は、佐賀県の情報公開請求を使えば、手に入りそうなので、それでの入手を試みてみます。
副教材も従来通りの紙媒体であれば進級や卒業後も手に残りますし、何かあった時にあとから見直すことも出来ますが、今のデジタル教材だと進級したり卒業したタイミングで消去されそうな感じですね。
そのあたり、もう少し調べてみる必要はありそうに思えるので、ちょっと考えてみますか…。