武雄市図書館内の蔦屋書店、年商は 1 億 5 千万円より上か?下か?

以前書いた武雄市図書館・歴史資料館内の蔦屋書店部分の売上を推察したエントリーに関連して、興味深いことが書いてあるブログが有った。

年間で約 2 億 8 千万円の売上の売上が立つ、という試算になるわけですが…。
計算してみた本人も、最初「え~」と驚いたわけですが、やはり試算のベースになる来館者が大きいなぁ、と。勿論、平均利用単価やいわゆる目的外と言われている部分の利用者の割合が変われば、この試算額も変化しますが、少なくとも億単位の売上が立っているのは間違いがないんじゃないか、と予想できるわけです。

[From 武雄市図書館内の蔦屋書店とスタバの売上をざっくり試算する #たけお問題 - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]

出版・読書メモランダムというブログの今年の 4/1 の記事が、それ。
その一部を引用しつつ、再度思ったことなどを書いておく。

売上総額ほどではない店舗あたりの売上

TSUTAYA の「書店」としての年商に関するくだりは、以下の通り。

[本クロニクル70で、TSUTAYAと蔦屋書店が書籍・雑誌販売金額1130億円で、書店業界における丸善と紀伊國屋の両雄時代は過ぎ去ってしまったとも記しておいた。だが単店売上から再考してみる。

確かに店舗・ネット販売業における丸善の数字は、TSUTAYAの数字を大幅に下回っているが、丸善の店舗数は43店なので、一店あたりの売上は17億円である。これはもちろん面積比較は除外し、ネット売り上げも入っているので、厳密なものではないが、一応の目安とされたい。それに対し、TSUTAYAは742店の販売金額であり、一店あたりにすると1億5000万円、月商1250万円ということになる。とすれば逆に大型店舗の割には驚くほど売っておらず、単独では多くが利益を出していないとも考えられる。
つまりTSUTAYAの場合、書籍・雑誌店舗売上において、トップに立っているけれども、それはあくまでレンタルをコアとするフランチャイズシステム店舗網をトータルにした数字であり、グロスの数字は大きいにしても、単店売上はきわめて脆弱で、不安定なものだと断言していい。

[From 出版状況クロニクル71(2014年3月1日~3月31日) - 出版・読書メモランダム]

売上総額は高くとも、それは店舗数の多さにより達成されたものであって、レンタル事業に付随した「書店」だから書店として何とか成立し得るという状態だと分析されています。

店舗平均で年商 1 億 5 千万円、だとすると、武雄市図書館内の蔦屋書店は、どのぐらいの売上があるんでしょうね。来館者の多さから考えれば平均以上の売上はあるのでは、と予想できますけど…。(書籍販売よりも、スタバのほうが売上的には貢献してそうな気も…。)


分析にもある通り「レンタル事業」抜きでは店舗としては成立しないことを CCC の判っているでしょうから、武雄市でも「単独スペースとしてCD/DVD レンタルコーナを作りたい」と要求したのでしょう。結局、当初残されるとされていた蘭学館が、そのためのスペースとして差し出されてしまったわけなんですが、レンタルに関してはどれだけ売り上げているんでしょうね?(このへんの時系列については、こちらでまとめられている。 → 今、「蘭学館」はどこにある? - 古禽洞
ブック&カフェとしての「武雄市図書館」の話は Twitter でもちょくちょく見かけますが、蘭学館を潰させてまで確保したレンタルコーナーの話は、あまり聞いた記憶はないので、実際は閑古鳥が鳴いているのかも。

CCC にとっての最重要事項は、やはり T カード?

結局、レンタル事業にしても T カードを中心とした購買履歴情報収集のエコシステムの一部でしか無いわけで、そこへの情報のインプット元としての「公共図書館」などの公共系サービスの利用情報というのは、きっと魅力的なのでしょう。

CCC= TSUTAYAは代官山蔦屋書店をモデルとする大型店の出店、図書館事業への進出、カフェ事業の立ち上げなどプロパガンダに余念がないが、それらはFCシステムやTカード事業の維持に向けられているのであって、あくまで書籍・雑誌を売ることを目的としているのではないと考えるべきだ。

[From 出版状況クロニクル71(2014年3月1日~3月31日) - 出版・読書メモランダム]

CD/DVD レンタル事業や書籍販売だけでは、公共系の仕事への接点はほぼ皆無だったでしょうから、「武雄市図書館の指定管理者」という実績は、 CCC にとってはある意味で悲願だったのかもしれません。(仕事の内容の良し悪しがどうあろうと、ね。)
しかも、武雄市が「 T カードを図書利用カードとしても使えるようにする」という愚行を犯してしまったことで、行政が提供するサービスに T カードを利用するという「前例」まで出来てしまったわけです…。

今のところ、公共サービスの利用と T カード / T ポイントが紐付いているのは、武雄市図書館で利用者登録時に T カードを選択した人だけなので、「現時点では」データとしての利用価値は低いかもしれません。
しかし、現在進行形で CCC を図書館の指定管理者としようしている自治体がいくつかあるわけで、そういった自治体に対しても T カードを図書館の利用カードとして使えるよう、CCC は働きかけているでしょう。そうして懐柔されてしまった自治体からのデータが、すこしづつ蓄積されていくことで、「図書館利用者」という情報も重要性が増していき、CCC の保持している個人の購買履歴情報の価値も高まっていく、と…。

そういう意味で言えば、CCC にとっての武雄市図書館・歴史資料館の位置づけは、「新たな公共系の仕事を呼びこむためのショールーム」であって、公共系のサービスや施設の利用による情報の取得ができるようになれば良いから、売上にはこだわっていないのかもしれません。
#「指定管理については、赤字」と喧伝しておけば、さらなる税金投入が期待できる、という皮算用もしているかもしれませんけど…。

そして、オプトアウト無間地獄へ

11 月 1 日から、CCC から第三者に対する個人情報提供が始まるってんで、そのオプトアウトの手続きに関して、昨日の夜から盛り上がっているわけですが…。
さて、武雄市は、どうするのでしょうか…。

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