タブレット教育の主役は、誰なのだろう?

さて、ある自治体の議員さんが、武雄市のタブレットを使った反転授業(武雄市では、SMILE 学習と呼んでいる)の様子を視察されたそうで、そのことを Faecbook や自身のブログのに載せておりました。

5月28日(木)
引き続き佐賀県武雄市における視察でありますが
午後からスマイル学習について見学しましたので書きます。

[From スマイル学習を視察(武雄市) : 岩倉市議会議員 梅村ひとし 公式ブログ]

さて、この日の授業は、メディアの取材者も同席していたようで、そちらの視点からの授業の様子も記事となって幾つかサイトでも公開されていますし、週刊誌でも取り上げられていますね。

5月28日午後、武雄市の山間にある、市立東川登小学校にはネクタイ姿の男性ら、30人ほどがつめかけていた。
この日は、武雄市ご自慢の、タブレット型端末を使用した、公開授業が実施された。
「最新の授業がどう行われるのか、楽しみだ」
という期待する声の中、3年生と4年生の授業がスタートした。

[From 武雄市が公立小中校に導入したICT利用教育の破綻した実態①~動かないタブレット型端末~(今西憲之) | NO BORDER - ノーボーダー | 境界なき記者団]

議員さんのブログでは触れられていませんが、当日の授業でタブレットを使う段になって、いろいろとトラブっていたようです。

「先生、動かんよ。暗い画面のまま」
「パスワードが入れられん」
とタブレット型端末の不具合を訴える児童が、複数いる。
そのたびに、支援員と呼ばれるサポート役と先生が、児童に駆け寄る。支援員は代替機を膝に置き、タブレット型端末を上下にしたり振ったりと大苦戦。
10分近く、完全に授業はストップしたままで、なし崩し的に終わってしまった。まったくの期待外れ。
 
「こんなのが、ICT教育なんだ」と落胆した表情の視察者もいた。

[From 武雄市が公立小中校に導入したICT利用教育の破綻した実態①~動かないタブレット型端末~(今西憲之) | NO BORDER - ノーボーダー | 境界なき記者団]

そもそも、タブレットを使った授業を視察しに行ったはずなのに、授業の中でタブレットが登場したのは授業の後半…。それも授業の内容についてのアンケートを児童に答えさせるためだけにタブレットを使うというのが「最新の授業」なのか、という感じですが…。
もちろん反転授業なので、自宅に持ち帰らせたタブレットで予習を行ったことが前提での授業となっているのでしょうけど、予習してきた内容に対して先生がコメントとするとか、児童同士でタブレットの画面を見せ合ってあーでもないこーでもないをやったりするのかと思えば、そういうことでもないんですね。(というか、タブレットを使った反転授業、って言葉からのイメージで、てっきりそういうもんだと思っていたのですが…。)

議員さんのブログにも「タブレットならでは」とか「授業中にタブレットを利用して」といった事が書かれていなかったので、授業中にはあまり活用されていないんでしょうかねぇ。


現場は、疲弊してないかい?

使えない機材を押し付けられ、視察者が押しかけているのが現状だとすると、現場を預かる教師への負担は如何程のものなんでしょうね。
ただでさえ「教える」事以外の雑務が多くて大変だという話がある上に、公開授業のための準備や反転授業で使う教材をどうするかといったことまでやらなくちゃいけないわけですから、そりゃ大変なのではないでしょうか。

武雄市の場合は、反転授業だけではなく、「花まるタイム」への対応もあるわけですから、そりゃもう大変なのではなかろうかと…。

こんな授業を視察して、得るものって、なに?

で、「先進のICT教育」を武雄市に視察しに行く地方議員や自治体関係者が多いわけですけど、その視察から得るものってどんなことなのでしょうね。

相手の都合の良い部分や見た目の良い部分だけを見聞きしてくるのが、視察ではないと思うのですよ。
「どんな問題点があったのか」「どういう問題の発生が想定されるのか」といったことやトラブルの発生事例なども含めて先例から学んでくることで、ようやく自分たちの施策に活かすことが出来るのではないでしょうか?
そういう意味では、5/28 の授業の際の機材トラブルの現場に居合わせた視察者の方にとっては、「こういうことが起きえるということが判って、ラッキー」だったのかもしれませんね。

教育は、誰のため?

先に取り上げた記事ですが、続きが公開されておりました。
内容的には、独立系ニュースサイトのHUNTERで既報となっている内容と重複している部分も多いのですが、印象的だったのは、記事の最後の段落。

実際、授業をするのは先生、受けるのは子供たちだ。
すべては子供たちのために。だが、武雄市では、すべては大人たちのために。
そう思わざるを得ないのである。

[From 武雄市が公立小中校に導入したICT利用教育の破綻した実態②~「大人の事情」で採用されたAndroid~(今西憲之) | NO BORDER - ノーボーダー | 境界なき記者団]

本当に子供たちのためになっているのか、本当に子供たちの為を考えて行われていることのなのか、よく注視していかなくてはならないでしょうね。
#勿論、武雄市をモデルにして〜、ということが、自分の住んでる自治体でも行われないようにするためにも。

少なくとも、「タブレット端末を市内小中学校の全児童・生徒に配布」ってのは通過点であって導入後の利用状況や使うことの成果が重要視されるべきもので、「配布する」ことを目的としてしまった人達にいいようにやられてしまったのが、武雄市の事例なのではないかと、個人的に思うのでした。

参考サイトなど

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さて、一昨日のエントリーの続きのようなもんです。 NOBORDER で取り上げら... 続きを読む

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