タブレット PC 、現場から聞こえるのは悲鳴のみ

前に書いたエントリー、珍しくコメントが付いたなぁ、と思って読んでみたら、どうやら学習者用 PC (と言う呼ばれ方をしている模様)を操作できる立場にある人からではないですか。

正直これはPCではないです。 PCと言う名の教材。

[From 授業時間削って、生徒自らがインストール、だと… - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]

コメントには、URL が一緒に入力されていたので、そちらを見に行ってみたんですけど、学習者用 PC を使って授業を受ける側、要は実際に佐賀県の高校に通う生徒からコメントだったようです。
最初は、「 IT 系の仕事に就いている保護者?」かと思ってたんですが、彼(彼女?)のブログの他の記事を読んでみて、なんか違うなぁと思ってたのですが、追加されたエントリーを読んで確信に至った次第。

学習者用 PC 自身の状況は、どうなのよ?

さて、コメントに書かれた内容を整理すると、学習者用 PC の設定に関しては、次のような状況のようです。

  • 利用者である生徒に対するユーザ権限は、かなり制限されている。
    • 利用可能なのは IE 、 Windows Media player 、 exploler.exe 、 Office 関連、デジタル教科書、電子辞書、メモ帳、付箋、ペイントとカメラ。
    • Web アクセスも、 i フィルターによりガチガチに制限。
  • Administrator 権限は、タブレット端末の購入窓口でもある学映システムのみが保持している。(コメントの書きっぷりからいくと、学校側には Administrator 権限が与えられていないような感じが…。)
  • アンチウィルスソフトは、ウィルスバスターのコーポレートエディション。

あとは、学習支援システムとしての SKYMENU 関連のエージェントが入っている、という感じなんでしょうかね。
「極力、制限をしておきたい」という考え自体は理解できますけど、ユーザの立場や利用目的を考えた権限の設計とか出来ているんですかねぇ、というあたりには非常に疑問を感じるところです。

実際の操作感なんかは、彼のブログの方に細かく書かれているので参照してもらうとして、運用面もグダグダなら、実機の操作面もグダグダなようです…。

1.起動が遅い。
→SSDなので早いと言う人も居ますが、電子辞書と比べたらログインの手間とかもあって遅いです。 軽く調べたい時にはとってもイライラするほど手間があります。

[From とても眠い人のブログ: 学習者用PCの問題点]

自分が読んでみた感想としては、「使えないもん、買わせるんじゃねぇよ」と。
コメントをくれた彼も書いていますが、プログラミングが出来る環境は準備されていても良かったかもしれません。授業でやるかとか、全員が使うかとかは関係なく、環境が準備されていれば、興味のある子は独学でどんどん必要な知識を身に付けていくでしょう。
そのほうが、よっぽど教育効果が高いんじゃないかと思うんですけどね。

それにしても、自宅には自分専用 PC があるとか、自分専用ではないけど家に PC があって自由に使うことが許されているという家庭もあるでしょうから、そういう環境で育った子にとっては、使いにくいものを授業で使わされるという感覚を感じているんじゃないでしょうか?
(もしかすると、「高校入学したらお祝いに」 iPad 買ってもらえるとか、 iMac 買ってもらえる、という約束があったのに、それを反故にされてしまった、という生徒もいるかも…。:-p)


現場からの声を消させるな

既に取り上げた、もう一つの現場の声の方でも、少しずつですが、新しい情報や授業に際しての状況などを伝え続けてくれています。

授業で学習者用パソコンの使おうとして「はい、準備して・・・」となっても40人が一斉にパソコンを取り出しID、パスワードを入れてとやっていると早くて5分、中には話を聞いていなかったり、ロッカーにパソコンを取りに行ったり、IDパスワードの紙が見つからなかったり、充電が出来ていなかったり、パソコンを忘れて持ってきていなかったり(仕方ないので予備のパソコンを取りに行ったり)と、実際には10~15分かかります。それからようやく授業がはじまるといったところです。

[From 学習者用パソコンの使いづらいところ - 佐賀県ICT利活用教育の現場報告 - Yahoo!ブログ]

いろいろと想定不足で発生していることが、沢山起きているようで、現場の四苦八苦はまだまだ続きそう。

心配なのは、こういった内部からの悲鳴を潰そうと、行政が動いたりしないよなぁ、という点。
行政としては「失敗」とは認めたくないでしょうから、こういった内部からのネガティブな情報が拡散することは望んでいないはずです。良くも悪くも全国的に注目されている施策ですから、何が何でも成功させたい(成功していると思わせたい)という想いも強いはず。
ま、全国からの注目の施策ですから、こういった声が聞こえてこなくなったり、ブログの更新が途絶える、突然消えるというが起きれば、「なにか良くないことが起きた?」と更に騒がれる事になるわけですがね。

逆に、実際に学習者用 PC を使って授業を受ける立場である高校生で、学習者用 PC 以外も PC を使えるという人には、どんどん授業の様子とかデジタル教材のここが使いにくい、と言った情報を発信して欲しいな、と。生徒が積極的に使おうと思えるようなシステムでない限り、学習には役立たないでしょうし、成功したということも出来ないと思うのです。学習支援システムやデジタル教材は、教師が使いやすいことも必要ですが、生徒が使いやすいということが最も大切なことであって、その生徒の声を適切に吸い上げることが出来ない限りは、まともなものは出来上がってこないのではないでしょうか。
そのためにも、ぜひ内情を知らせて欲しいと願うわけです。
#自分の意見をまとめ、それを発信する能力を育てる、というのも十分に ICT 教育の目的になり得る、と思いますし。

端から見ていると、現場の教師や ICT 支援員、教育を受ける当事者である高校生からすれば、とてもとても長い茨の道を歩かせるようなものになっている、高校でのタブレット PC の導入。
短いけど、人生の中ではとても大切な高校 3 年間という時間を使って、IT 嫌いの人間を大量に社会に送り出すつもりなんですかね、佐賀県は?

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ということで、動きがあったようですね。 結局は、人海戦術で、ということのようです。 同課によると、県立高36校のうち34校で、教材メーカー大手2社のソフト... 続きを読む

コメント(4)

誰を信じていいのやら 返信

イライラしています。
佐賀県高校1年の母です。
導入時、保護者の意見を聞く機会は皆無でした。購入しなければ「入学保留もありうる」の脅しがあり、全員購入。「同等の機器保有者に対しては4万円程度のお金が必要」とのことで佐賀の田舎者は、全員購入したわけです。

フタを開けてみると、授業中に、ソフトのダウンロード。同時にクラス全員ができるわけなく、「時間の無駄」
いわゆる紙辞書や電子辞書は購入させず、3冊の辞書がインストールされておりますが、子どもは「面倒くさい」ということで、別の電子辞書を使ってます。
デジタル教科書よりも紙の教科書が使いやすい。

ネットに依存させるな!と指導している学校がタブレットを与えるなんてナンセンスです。ちなみに、その高校は相変わらず、携帯、スマホの持ち込み禁止です。

今週、中間テスト中、3日間で、生徒の機器にソフトをインストールするらしく
承諾書が配られています。
個人用タブレットを第三者に触らせることは
違法?なのですか??だから承諾書が必要なのでしょうか?

yutake86 返信

楽観していると思われるかもしれないが、
本格的に、または大々的になったのは最近のようですし、
これから(日本人が大好きな)改善ができるのかが見ものでしょう。
基本的に最初の人間は犠牲になりやすいものです。
(私は子持ちじゃないし、そういう立場にいないので無責任ですが。。。)
あるいは今回を試金石にどうしたらいいのか、
私達なりに議論して上に伝えていけたらいいんでしょうが。

まあ、その一方で、こんな教育が2年も3年も続くようなら、
やっぱりお役所の仕事なんてそんなもんなんで向いていないんでしょう。

P.S.
改善点というわけではないですが、
PCの値段はキックバックがあると思われてもしょうがないですよね。
教育に必要なのは、PCというI/Fなわけですし。
(環境の一貫性については線を引く必要はありますが)

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