安物買いの銭失い?だったのでは、と思わせる武雄市のタブレット導入

「ICT先進自治体」として、良くも悪くも有名な武雄市ですが、ここ数年続けているタブレットを利用した授業に関する研究報告の最新の状況として、武雄市「ICTを活用した教育」第三次検証報告が公開され、それに基づいた新聞記事がいくつか出ていました。

武雄市のICT教育について、東洋大の研究プロジェクトが第3次検証報告をまとめた。武雄式の反転授業「スマイル学習」は実施率が低く学校間でもばらつきがあることを指摘し、学習効果の検証と教職員の負担軽減などによる実施率改善を求めた。

[From 武雄の反転授業を東洋大が検証、負担軽減を|佐賀新聞LiVE]

佐賀県武雄市と東洋大学などが共同で進めるICT(情報通信技術)を活用した教育研究プロジェクトの検証報告会が24日、同大の白山キャンパス(東京都文京区)で開かれた。タブレット端末を使った独自の武雄式反転授業「スマイル学習」を通じて学んだ児童の方が、通常授業の児童よりも理解度テストの平均点が高いとの結果が出た。

[From 【りこめんど】武雄式反転授業「スマイル学習」 - 産経ニュース]

日本一の学力を目指して武雄市が小学校にスマイル学習(武雄式反転授業)を導入して3年。「推進役であるはずの教職員が実はスマイル学習に消極的」と、ショッキングな現実を東洋大の第3次検証報告(2016年度)が突きつけた。市教委は「多くの利点がある」とスマイル学習は堅持する方針で、新年度から初の見直し作業に着手する。【渡部正隆】

[From 武雄のスマイル学習:導入から3年 推進役の先生、消極的 東洋大が第3次検証 初の見直し作業着手へ /佐賀 - 毎日新聞]

一通り目を通した感じでは、産経だけが問題ないような内容になってますが、佐賀新聞と每日新聞の書き方は「進め方に問題あり」と言った論調になっているのが、面白いといえば面白い。


自分でも、以前から何度が取り上げているネタではあるので、やはり気になるわけですが、

さて、このプロジェクト、ビジュアルプログラミング言語のベースとして、Scratch を使うということが表明されているわけですが

ビジュアル言語の中にも工業向けなど大人が使うものから色々種類があるんですが、今回は、MITのメディアラボが開発しました、Scratchというプログラミング学習のためのビジュアル言語をベースにした教材にしようと考えています。

[From 川崎修平(DeNA CTO)「プログラミング学習教材のコンセプトとそれに込めた想い」会見 | 公立小学校1年生へのプログラミング教育実施 | CSR活動 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】]
[From 武雄市 × DeNA × 東洋大 = 車輪の再発明をしたいだけ? - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]

小学1年生向けにプログラミング学習やるのに「なんで既ににあるもの使わずに、新しく作るんだろう?」と思っていた件は、どうやら導入したタブレットのスペックの低さが根本にあった、ということが最近明らかになりました。

ScratchJr という公式アプリは Google Play で配布されてますけど、それが動かせないほど低スペックな機種を導入しているということなのでしょう。

で、検証報告書にも目を通してみましたが、個人的に「それはないだろ?」と思っているのが、という下り。

教職員の負担感の大きな要因は、毎回のスマイル学習の前に児童生徒のタブレットPCに動画教材をインストールする手間であると考えられる。しかしそれは、2016年度に導入した新機種(5・ 6年生を対象に「TOSHIBA S80・武雄市モデル」)では、年間の動画教材のインストールが一度で 済み、教職員の負担は大きく減少する。

[From 武雄市「ICTを活用した教育」第三次検証報告]

「今使ってる機種が問題なのであって、新しくしたら解決する」って、その「問題のある機種」を選定した検討メンバーには、検証報告書の作成責任者でもある東洋大学の松原副学長も名を連ねていましたよね?
機種選定時の議事録の中でも、

この回は、タブレットのメーカ担当者を呼んでヒアリングを行った回のようなのですが、座長でもある東洋大学の松原副学長の以下の発言が、特に気になりまして…。

◯松原:タイのメーカーは価格82ドルのタブレットを販売している。限られた予算の中で導入する必要があり、価格も重要である。タイ、台湾等世界のこのような現状を知ってほしい。

[From [武雄市] H27-06-26 武市教ス第21号 H25-08-07 第2階武雄市ICT教育推進協議会議事録.pdf - Google ドライブ]
[From タブレット導入は、誰のため?(武雄市の場合) - Soukaku's HENA-CHOKO Blog]

と、随分と格安なタブレットにご執心だった様子が残っていますよ?
「安いのでも行けると思ってたけど、やっぱり駄目だったみたいだから、新しいの買うのをオススメするよ」だなんて、「マッチポンプ」と言われても仕方がないではないかと思うのですがねぇ…。
#想定される用途から必要スペックを逆算していったのであれば、DeNA も余計なコスト掛けてプログラミング環境を作らなくても良かったかもしれないわけですし。

タブレットの導入自体、「日本初、全小学生に1台づつ配備」っていう話題性が欲しかったことが目的(なので台数揃えるために格安タブレット)だったのであって、使い方は後からなんとかなるでしょ、と進めてきてしまったのが、現場からは敬遠されるような状況を作り出してしまったのではないか、というのが実際のところなんではないでしょうかね。

これを見ていると「急いては事を仕損じる」とか「安物買いの銭失い」ってのが思い浮かぶので、他の自治体の方々には、是非とも反面教師として、効果的に税金と時間を使っていただきたいところではあります。

ただし、実際と違うことを触れ回っている人がいるので注意も必要ですので、有権者たる市民がよく監視をしていく必要はありそうです。

先生の負担も軽減され仕事が忙しいと答えた先生の数は減少するなど成果は明確に表れている。

[From 三重県議会議員 田中ゆうじ:地方議員研修会 2日目]

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