新しい多賀城市立図書館とフロアレイアウトの不思議

今回は、高所書架に関して(その1その2)ではなくて、フロアレイアウトについて。

フロア1F

多賀城市の新図書館は多賀城駅周辺地域の再開発事業の目玉として建設されていることもあって、その事業を推進している多賀城駅北開発株式会社の Web サイトに色々と情報が出ている。
今回はそのサイトで公開されている公告(保留床取得について)というPDFファイルで公開されている新しい図書館のフロアレイアウトについて、色々とツッコんでみたいな、と…。


新図書館イメージ図

多賀城市は「ツタヤ図書館」としては、初の CCC の企画による新築物件となるわけですが、まぁフロア図見てるだけでも気になる点が、ちらほら。
武雄市図書館の2 階書架バルコニーのように、建築基準法上の制限から一般利用者の立ち入り禁止エリア(避難経路から30m超)が出来てしまったというのは、図面上存在しないように見えるので、そのあたりはちゃんと対応してきたようですが。

とりあえず 1 階を重点的に見ていくと、建物東側のエントランス正面の一等地は、既存のツタヤ図書館と同様、商業エリアで書店とカフェというレイアウトと、いつもの通り。エントランス入って左手側(南側)の高層書架の裏側が図書館エリアというのが、新多賀城市図書館の基本的なレイアウトで、2 階と 3 階も吹き抜けの北側が商業エリア、南側が図書館エリアという配置になっています。

個人的に一番気になったのは、エントランスの正反対の位置、建物の西側に位置する児童図書室。下はそのエリアを重点的に拡大したもの。

1F 児童図書コーナー付近の拡大(その1)

図書館エリア(イエローの部分)からもアクセスは出来ますが、エントランス入って真っ直ぐ正面という位置になるので、殆どの利用者は商業エリア(グリーンの部分)を通過して、児童図書室に向かうという動線を使うことになるでしょうね。
そして、既存のツタヤ図書館と同様に、子供の気を惹きやすい絵本や玩具類が、関所のように児童図書室の間近に配置されるのであろうことは、容易に予想されるわけです。

商業エリア、図書館エリアともに児童図書室との境には階段(北側にはスロープ)があり、児童図書室エリアは、他の 1 階部分よりも一段低く作られるようです。これは、教育委員会の会議録にも明記されています。

児童図書コーナーは、他のエリアに比べ床面を一段低くします。概ね90cmの段差を付けること及びエリアの境界に手すり等を設置することで、 商業施設と児童図書コーナーの区分を明確にすることに加え、商業エリアへの連絡階段のわきには児童図書専用の司書のカウンターを設け、常時司書を配置することとします。これらのことから、災害時や不審者への対応も的確に行っていきたいと考えています。

[From 平成26年 多賀城市教育委員会第3回臨時会会議録]

また、児童図書室の真横にキッズテラスがあり、非常時はそこを経由して建物外に脱出できるように経路の設計はされているようです。
図面上では、はっきりしませんがキッズテラスに面した一面は、おそらくガラス窓になるんではないかと思われます。


よく見ると、児童図書室に隣接して、BM 車庫というエリアが存在しています。
移動図書館車の車庫なんですが、良く図面を見ると、館内から車庫へのアクセス経路は児童図書館の一角に設けられた扉しかありません。更にその車庫の横には、車庫からしかアクセス出来ない図書倉庫が…。

自動詞図書コーナー

移動図書館車での蔵書積み替えや予約資料の積み込み時の運搬経路は、この扉の利用を想定していると思うのですが、オペレーション的には問題ないのでしょうかね?

現行の移動図書館の運行状況を見ると、毎週火〜木曜+隔週金曜運行と結構高頻度なようですし、新図書館オープン後も現行のサービスレベルを落とさない前提で同じ運行頻度を保つとすれば、それに合わせて予約資料の準備や実際の積み込みなどを、運行日の前日には終わらせおく必要はあるでしょう。
その作業、開館時間内にやろうとすれば利用者である子供たちの間を抜けての作業になるでしょうし、開館時間前後でとなればスタッフの勤務シフト的にどうするの、といったあたりを、どうクリアするつもりなのかな?
車庫横の図書倉庫に一旦保管するということも考えているのかもしれませんが、そこも館内からのダイレクトアクセスが出来ず、使い勝手が良くない配置になっているんで、実際に運行が始まると苦労しそうな感じがしますね。。

移動図書館車に関する業務フロー、現在携わっているスタッフにヒアリングしてないんでしょうか?> CCC
ヒアリングしていれば、館内からの移動の動線や、移動図書館車への積込前の一時的な蔵書置き場など、もう少し作業するスタッフの使い勝手を考えたレイアウトに出来たと思うのですけど…。

防災とか防犯とか

さて、このエリアに関しては、まだ気になる点が。

図面をよく見ると、児童図書室ーBM車庫間の扉のところには段差がありません。ということは、面一となっているようです。
別の資料にあった建屋の東西断面図で確認してみても…。

東西断面図

児童図書室から読み聞かせコーナー(BM車庫側)側をのぞむ

マークしてある通り、児童図書室は通常のフロアより低く(読み聞かせコーナーはそれより更に一段掘り下げらて)作られるために、建物の西側を南北に走る道路とそれほど段差がないような感じに見えます。
※パース図は、教育委員会の臨時会資料から切り出し。

気にし過ぎと言われるかもしれませんが、多賀城駅近くを流れる砂押川の浸水想定区域図を確認してみたところ、移動図書館車の出入り口付近まで浸水する可能性があるように見えますから、万が一の場合は真っ先にこの児童図書室のエリアが浸水するんじゃなかろうかと…。
もちろん、移動図書館車の出入り口に、可動式の防水堰を設置できる、といった対策が講じられていればよいのですが、果たしてそこまでの配慮された設計をしているのかどうかは、非常に怪しい…。

あと、児童図書室と車庫の間の扉、防犯上からいえば常時施錠となるのは確実だと思うのですが、どのような仕組みでどちら側から施錠するのでしょう?
一般的なサムターンタイプで館内側の施錠となると、子供でも簡単に開けてしまうことが出来てしまうでしょうから、カード接触型か暗証番号型にするのがよさそうですね。

あと、児童図書室のエリア、冬期は空調が効きにくいんじゃないか、という気がしています。
まず、先程からネタにしている車庫へ通じる扉。ここは、冬であっても頻繁に開け閉めが発生するでしょうし、扉の隙間から冷気が入り込んでくる可能性は十分あります。(車庫は暖房しないでしょうし…。)
キッズテラスのところも大型のガラス窓だとすれば、この部分かなり冷え込むんじゃないかと思いますし、結露とかも心配ですね。テラスへの出入り口も防寒対策のための前室が設けられているわけではありませんから、扉の隙間か冷気が直接入りこんでくるでしょう。
細かい雪が吹き込んでくることも計算しておかないと、吹き込んできた雪で、蔵書が濡れてパー、なんてことが起きそうです。

とりあえず、図面から読み取れる疑問点を書き出してみましたが、これでもまだ一部なんですよね…。
ということで、まだ書き足りないので、つづく。

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